【挿し木も簡単!鉢植えイチジクの木の育て方】

無花果(いちじく)の木を育てて収穫するにはどうすればいいのでしょうか?作者の栽培実例をもとに誰でもプランターでイチジクを実らせて収穫できる育て方を紹介します。
イチジクの育て方 栽培カレンダー

イチジク育て方

イチジクは中東が原産で寒さに弱く、冷涼な地域では鉢植えでの栽培が適しています。イチジクは栽培容易で無農薬でも栽培でき、日照時間の多さと雨の少なさが高糖度の決め手となります。イチジクは初心者でも簡単に栽培できるのでおすすめです。自宅のお庭や畑で育ててみましょう。

収穫できたイチジクはイチジクジャムにしてみましょう。
イチジクのドライフルーツ、できるかな!?


栽培適地

イチジクは温暖な気候を好み寒さに弱い植物です。日本では関東までの太平洋沿岸や瀬戸内海など、いわゆる柑橘類の産地である温暖地と栽培適地が同じです。中間地でもイチジクの栽培は可能ですが凍害に遭いやすいので幹が凍結しないように幹を保温したり北西側に壁や防風ネットを設置する必要があります。

イチジクの品種選び、イチジクにはどんな種類があるの?

イチジクバナーネとロードス

イチジクは品種がたくさんあり、定番のものから高糖度のものまでいろいろあります。お好みの条件を設定し、選んでみましょう。

  •  条件1:高糖度・・・もっとも糖度が高いクラスのものを基準に選びます。
  •  条件2:日本的・・・定番の桝井ドーフィンや、蓬莱柿という品種があります。もっと日本的な品種は日本で交配された品種です。
  •  条件3:樹勢の強弱・・・樹勢が強いものは開心形、樹勢の弱いものは一文字仕立てにします。
  •  条件4:酸味・・・酸味があるほうがジャムにしやすいです。
  •  条件5:色形・・・果実が着色しないタイプや、小粒のものや大きなものまであります。

おすすめの品種

イチジクでおすすめの品種は・・・近年流行していますのは糖度が高い品種です。ブリジャソットグリースは赤実でねっとりしてジャムのように甘く酸味も感じられ、ジャムにも適しています(好条件、少雨で栽培に成功した場合)。インターネットでの評判もよいようです。セレストブルー(果皮が青灰色のセレスト)もかなり甘いようですが小粒なのが残念です。 サルタン も糖度高い品種です。アメリカでよく栽培される ブラウンターキー(ブラウントルコ) もおすすめです。純国産の品種が良いなら姫蓬莱かとよみつひめがおすすめです。久留米シリーズは国産品種かどうかはプレスリリースがないので不明です。意外と知られていませんが桝井ドーフィン早生日本種(蓬莱柿)は海外産の品種です。バナーネ(ロングドゥート)は日持ちしませんが甘すぎずみずみずしく大きさもありますので熟年男性に人気があるようです。

雨や水やりで裂果したり落果せず乾燥にも少々強い品種が特におすすめです。

ビオレ・ドーフィン(※夏果専用品種で秋果は受粉を要する)は夏果が大きく品質が良いので販売に適していますが夏果は貧産でキングほど豊産性ではありません。キング(※夏果専用品種で秋果は受粉を要する)の夏果は豊産で夏季に直売所での販売に適しています。

イチジクの品種一覧 120種類の風味の特徴の解説⇒(筆者渾身の執筆ページ)
詳しい品種の特徴の解説や苗木のご購入は上記のページからどうぞ。

よい苗木の選び方

イチジクの良い苗とは、根が多く、根や幹にコブなどが付いていない苗がよい苗です。苗木の状態の主幹の太さは品種によって異なりますのでまっすぐ元気そうに伸びているものを選びます。(逆にまがっている苗は管理が悪いとみなすことができます。)とはいえ、通販や、ゴムバンドで止めてあったり、ホッチキスで止めてある苗木は確かめようがありません。購入後も対応してくれる信頼のおけるお店で相談されながら購入されることをおすすめします。葉にモザイクがないのが良い苗です。

用土について

イチジクは水はけよく肥沃な土壌が適しています。腐葉土などの有機質をたっぷり漉き込みましょう。イチジクの根は通気性の高さと少量の水の両方を同時に好むという特徴があります。

例:赤玉土6+腐葉土3+1+バークチップでマルチング
(砂を推奨しているのは当ページだけです!)

鉢底には鉢底石を敷くと水はけがよくなります。苦土石灰を混ぜ込んでおくと尚よいです。植えつけの際は、鉢に根が伸びる余地があるよう根を整理しておきます。 鉢植えのイチジクはマルチングがほぼ必須の条件となっています。夏季だけはバークや不織布などで表土をマルチングしておきましょう。 砂が多いとコガネムシが喜びます!砂があると夏場は水分の蒸発を抑えられるので便利です。

※まだ試していませんが、ココピートも水切れ対策にいいかもしれません。

イチジクの鉢植え栽培(プランター)について

鉢栽培で実をつけたイチジク

イチジクは小さな庭でも植木鉢(プランター)での栽培が可能です。しかしイチジクは根の発達が旺盛なので植木鉢(プランター)を選ぶ植物です。ロングスリット鉢など、底の深い植木鉢(プランター)が栽培に適しています。植え付け1~2年目のイチジクは10号スリット鉢で十分です。収穫量のおおよその目安は10号鉢でSMサイズのイチジクが5~10個、45L植木鉢で20個程度収穫可能です。植え替えについてはまた後で詳しく説明しています。夏の水切れ対策として、湿った地面の上に鉢を置いたり鉢を土中に埋めることで鉢から漏れ出た根に給水させる底面吸水という方法があります。水切れが起きる時間帯は日中ですので、真夏は昼にも水やりを行うなどして、表土からの水分の蒸発を防ぐようにします。

植え付け1年目におすすめの植木鉢・プランター

イチジクのおすすめのプランターはスリット鉢よりも深鉢のほうがおすすめです。スリット鉢では水切れしやすいので夏の管理がたいへんです。

植木鉢・プランター選びのポイント

懸崖スリット鉢は取っ手があり移動させやすいというメリットがあります。菊鉢は国華園の植木鉢ですので安価に入手でき、底も通気性がよくなっており地面から少し隙間が開いてます。これらの植木鉢はどれでもおすすめです。グラフファイバーの植木鉢は見た目がおしゃれです。

植え付け方

買って来たばかりのイチジクの苗木は1本の棒状となっています。接木の部分にテープが付いていたら取り外します。まずは石灰質や腐葉土などを混ぜた土を入れた植木鉢や畑の地面に苗木を植えこみます。接木部分が完全に埋まらないように植えます。このときに苗木の地上部が地面より低くならないように気を付けます。軽く土を押さえて水を与えます。凍害のおそれがある場合は地面に藁や枯草を敷き詰めて主幹にも藁や布を巻くなどして保護します。植え付け後は太い支柱を立てて苗木が揺れないように紐で固定します。植え付け時期は苗木を購入してすぐがよいと思います。あまりに寒すぎるような寒冷地では春になってから植えつけます。

肥料について

イチジクの肥料を与える時期は基本的に年3回、冬の元肥、6月と9月上旬に追肥します。鉢栽培では秋の肥料はなくても無問題です。4月末あたりから微量要素入りの液肥を積極的に葉面散布もするなどして与えると葉が大きく茂ります。イチジクは生育旺盛な品種の場合、肥料と水をたくさん吸収します。イチジクのプランター栽培で肥料切れという現象は起きにくいと思います。むしろ多肥による害が起きやすいといえましょう。肥料は有機肥料やミネラル分の入ったものを与えます。化成肥料を使う場合は一度にたくさん与えず少量ずつ回数を増やして与えます。植え替え時には苦土石灰(マグネシウム)も一緒に与えたほうがよいでしょう。


イチジクがあまくなる肥料はある?

イチジクの糖度を上げて甘くするには肥料よりもまずは天候が大事です。イチジクは光の量で甘さが大きく変動します。気温については落葉しない程度の気温であれば糖度の心配はいりません。本当は何とかの特性肥料が効く!ということをお知りになりたいのだと思いますが、動植物などを分解した栄養たっぷりの肥料をあげていれば大丈夫です。糖度は品種によって大きく異なります。

イチジクLSUエバービーリング

イチジクLSUエバービーリングはもともと糖度が高い品種で小粒でとても甘いです。一時期は液肥を活用していましたが葉が立派になるばかりで萎れやすくなるデメリットなどがあり現在は有機100%の肥料のみで栽培して糖度は写真のようになっています。土は市販の300円くらいの培養土です。露地栽培の場合は水切れが起きにくいので液肥を活用してもよいでしょう。栽培に化成肥料や液肥を使うと有機栽培や無農薬といえなくなることに気を付けてください。

水やり方法について

イチジクの新梢は水切れしやすいです

イチジクは非常に水をよく吸いますので、鉢植えの場合は夏季の水切れに注意しなければいけません。イチジクは水が切れると葉が力なく垂れ、水が一日でも不足すると落果・落葉します。鉢栽培の場合、夏季は1日2回以上の水やりを必ず必要とします。露地植えは基本的に水やり不要ですが、2週間程度の激しい日照りが続くようなら水をほんの少しずつ継続的にあげましょう。

長雨や日照不足は糖度が上がらなくなる原因となるので、梅雨と秋雨の時期は加湿と日当たりに注意しましょう。水切れが気温35度以上の猛暑日に何度も生じるようであれば、7月下旬から8月上旬にかけての期間は明るい日陰に鉢を移動させたり乾燥を抑えるために不織布などでマルチングをします。

イチジクの水やりと果実の品質の関係

イチジクは乾燥と湿潤の差が大きいと、早期落果したり未熟果が熟したり、早期に裂果することがあります。表土からの水分の蒸発について対策をしておかないと、イチジクの果実の品質が悪くなる場合があります。

鉢植えのイチジクの水切れ

水切れで干からびた葉。真夏の鉢栽培では1日3回くらい水をあげないとこのようになります。このような水切れは、早期落葉の原因となります。

鉢植えの水やり対策

イチジクの鉢植えの夏場の水やりの目安は気温30度の場合、朝と昼または夕方の合計2回、35度以上の場合は朝、昼、夕方と3回くらい水やりをしたほうが安全です。しかし1回あたりの水の量は多すぎないようにし、マルチングで蒸発を抑えます。 夏場は朝に水やりを忘れると、夕方には果実が萎んで落果・落葉してしまいます。夏の鉢植えは毎朝の水やりが欠かせません。

急な水ストレスは厳禁!

収穫時期が近づくと、乾燥が続いた後に急なスコールが降るなどすると品質が悪くなります。8月は普通に水やりをしただけでも裂果します。 (私の理想は少量で回数を多くするという方式ですが、散水タイマーがないと実現困難です。)

イチジクの裂果
カパッ!とイチジクの裂果、そして雨。

夏の遮光ネット等で水切れ対策

イチジクに遮光ネットを設置して水切れ対策

鉢植えのイチジクは夏になると水切れを起こして落果や落葉してしまいます。筆者が観察した限りでは大果の品種ほど早期(初夏)に落果しやすいです。気温が摂氏35度以上の猛暑になると、植木鉢の中の水分が無くなってしまい、イチジクが干からびて落果してしまいます。落果を防止するためには土中の水分を一定に保つ必要があります。その手段のひとつとして、遮光ネットを設置して温度上昇と直射日光を遮り水分の蒸発量を抑える方法があります。半日陰に鉢植えを移動するという方法もあります。気温が30℃を超えたら遮光ネットの設置を検討してみましょう。


イチジクの剪定方法について

イチジクの剪定時期は休眠期の12月や1~2月に行います。

1年目の植え付け時の剪定

苗木を植え付ける時は鉢植えでは10cm~適当に、露地植えで40cm、あるいは好みの高さで主幹を切りますが一文字整枝以外の手法では特に何センチという決まりはありません。経験豊富な方なら下から4~5芽くらいで切ってもよいでしょう。

1年目は主枝となる枝を二本(一文字整枝やH型整枝またはYの字)、自然樹形が好みであれば四本程度伸ばし弱い枝は除きます。一文字の場合は二本の主枝を水平に伸ばし誘引します。1年目の冬季に充実したところの外芽まで切り戻します。

イチジクの剪定方法
イチジク1年目の剪定

購入した苗木を、プランター栽培用に大きく切って芽吹いたところです。その後、主幹から勝ち枝と負け枝が出てきて4本の主枝になりました。この状態からの樹形の大幅な修正は困難ですので自然風樹形にするのか、カッチリ誘引固定するのか1年目に決めなければなりません。挿し木と小さく書いてますが、ご覧の通り、挿し木も簡単です。新梢が伸びたら幹が緑色のうちにしっかりと支柱を立てて誘引しましょう。

夏果を得るための剪定方法について(重要)

イチジクの夏果を得る剪定

夏果を得るためには写真のような芽を切らないようにします。この枝先に翌年の夏果が含まれていますので、この部分を切ってしまうと夏果を得ることはできません。イチジクの夏果を得たい場合は、夏果を生じる枝と、切り戻す枝を決め、交互に剪定するとよいでしょう。

樹形づくりについて

コンパクト栽培でも樹勢が弱い品種は一文字仕立てや、樹勢が強い品種はV型やY型(開心形)にします。上から見るとX(樹形を作るまでに最低3年を要する)の開心形やH型(樹形を作るまでに最低3年を要する)、主幹形のように仕立てることも可能です。地際より何本も放射状に枝を発生させ、背丈より高くせずにして何年かしたら新しい苗木に置き換える栽培方法がインドでとられているようです。イチジクは太い枝よりも細い枝を大事すると考えたほうが栽培のコツが掴みやすいと思います。なぜなら太い枝の管理はたいへんですので、なるべく太い枝を増やさないように維持管理できればよいと思います。

イチジクのプランター栽培
イチジクのプランター栽培
栽培2年目のイチジクです。

枝を開帳させる場合は枝が柔らかいうちに誘引しておき裂けないように紐で分かれ目の枝同士を結びます。枝が固まってから枝を広げますと幹が裂けてしまいます。

代表的な樹形は一文字仕立てと盃状仕立てがあり、品種によって適した樹形が異なります。鉢植えの場合は主幹形やミニ一文字仕立てなどで主幹から2~4本の枝を伸ばします。自然形でも実りますので剪定についてはそれほど難しく考える必要はありません。

一文字仕立てに向く品種は、桝井ドーフィン、盃状仕立てに向く品種は、蓬莱柿です。夏果が実る品種と秋果専用品種では剪定の行い方が異なります。

イチジクの基本的な剪定は、前回新しく伸びた枝を2~3芽残して先端を切ります。古い枝や要らなくなった枝、込み合った枝は基部から取り除きます。鉢植えでも同様です。

いろいろなイチジクの鉢植えの仕立て方と剪定方法
いろいろなイチジクの鉢植えの仕立て方と剪定方法

絵の難易度が高すぎて少々イラストが汚いですが、いろんな形で仕立てることが可能です。

イチジクを剪定する際は芽のすぐ上で切るのではなく芽の上に余裕を残して切ります。理由は切り口から2~4センチくらいは下手をすると枯れてしまうからです。枝の枯れ込みが止まったら再び短く切って癒合剤を塗っておきましょう。

イチジクの樹形に関する考え方は単純です。

一文字整枝・・・樹勢の弱い品種に対して使われます。樹勢が強くなりますので樹勢が強い品種に不向きです。

開心自然系・・・樹勢の強い品種に対し用いられます。

鉢植えのイチジクの剪定方法と樹形
Y(V)字

収穫量は10果未満と寂しくも1日0.5果収穫できましたのでここから上から見るとH型に発展させたほうがよいと思いました。Hにするには左右の枝を半分以下に切り、そこから伸びた枝二本を180度別方向に水平に伸ばしていきます。X型より樹形の完成に時間が1年余分にかかりそうです。

鉢植えイチジクの剪定と樹形

この形状、山+1枝では葉が重なり混みがちでY形より収穫量は多くなり1日1~2果収穫できましたが少々物足りないので上から見たらXの形になる樹形がよいかもしれません。Xにするには山の真ん中の枝を切り、新しく主幹から向こう側の枝を生やすことで完成できます。

どちらの樹形も鉢栽培用で多収は望めないので、収量を増やしたい場合はいくつかの鉢を並べて複数本栽培します。1鉢あたり半~1人前の収穫量、そう考えると何鉢必要になるか計算が早いです。

一文字整枝

いちじく一文字整枝

イチジクの一文字整枝は植え付け時の春に2芽を横方向に伸ばし枝が折れない程度に水平に誘引します。枝先は下がらないように上げておきます。その冬に横に伸ばした枝の先端を上の芽のある場所で剪定し翌年も好みの長さになるまで水平方向に枝先を上げつつ新梢を伸ばします。翌年からは垂直方向に新梢が伸びるのでその枝についた果実をいったん収穫します。このときに伸ばす新梢は横の芽から伸びた枝を使い真上についてる芽は欠き取ります。その冬は横の芽から出た新梢を2芽残して剪定します。既に枝が固まっている場合は無理に水平にせず若干斜め上方向でも趣味栽培では無問題です。結果枝の数は芽欠きをして調整します。

秋の剪定について

夏果が必要のない場合、肥大が見込めない果実が付いた枝を秋に切ることで、余計なエネルギーの消費を抑えることができます。

冬の剪定について(樹形完成後)

樹形完成後の冬の剪定の仕方は先ほど述べた夏果を得る方法の剪定以外に外芽のところの好きな場所で剪定します。最終的にどの程度木を大きくしたいかによって剪定方法は異なります。剪定後は藁などで防寒します。木が太くなってくると剪定には切り口がきれいに切れる鋸と木工ボンドが必要になります。剪定が手に負えなくなってきたら挿し木するなどして木を更新しましょう。

イチジクの挿し木について

イチジクの挿し木

イチジクの挿し木は、短く切った枝をポットに深く挿すだけで簡単です。上部には癒合剤や木工ボンドを塗って枯れ込みを予防しましょう。挿し木は斜め挿しがよいという見解もあるようですが、垂直挿しでも特に問題はありません。挿し木で気を付けるポイントは、芽の数です。挿し木の一番下の目の付近から発根しますので、最短でも1枝に2芽は必要です。

筆者の経験では大きな植木鉢に挿し木するよりも、小さめのポットに1枝ずつ挿し木したほうが、成功率が良い気がします。ビニールポットよりも、スリット鉢に挿し木したほうがその後の成長が良いです。

苗木の更新時期について

イチジクは年々幹が太くなり管理しづらくなってきます。10年~15もすれば露地栽培で自然形の木の内側に実のならない無駄な空間が大きく生じ幹の管理に労力を要しますので、新しい苗木に更新したほうがよいでしょう。イチジクは挿し木が容易ですので、更新の3年前くらいから前もって育てておいたほうが管理も楽でしょう。いや地現象といって、同じ場所にイチジクを植えなおさないほうがよいです。鉢栽培の場合は4~5年目あたりから更新用の予備の苗を育てておいたほうがよいかもしれません。露地栽培の場合は樹齢10年を超えたら苗木の更新を検討してください。イチジクの木の生産寿命は無理をしても30年くらいが限界でしょう。木の寿命は長くても土地は疲れ切ってしまいます。

イチジクの植え替えについて

植木鉢やプランターで育てたイチジクを植え替えます。毎年植え替えをします。植え替えをしないと水切れになり夏場に萎れやすくなります。

2年植え替えなかった鉢植え(10号菊鉢)のイチジク。

このように2年間植え替えをしなかったイチジクの根鉢はまわり、植木鉢から抜くのも一苦労です。同じ植木鉢(プランター)に植え替える場合は表面の土を削り取ってイチジクの根塊をひとまわり、側面は2~3cm、底面は5cmくらい小さくします。そしてまた新しい土を入れて同じ植木鉢(プランター)に植え直します。写真の下に写っています土は赤玉土です。もう少し増産したい場合はひとつ大きな植木鉢に植え替えます。その時も根鉢が詰まっているようなら少しだけ崩したほうがよいでしょう。イチジクはほとんど根鉢をほぐして土を大きく入れ替えても大丈夫です。その際にコガネムシの幼虫などがいないか調べます。

効果的な植え替え法
毎年同じ場所ばかりを削ってしまうと植え替えができていない部分が生じます。今年は左右・・・その次は前後を多めにそぎ落としていけば根も土もリフレッシュしやすいのではないでしょうか。

植え替えにはこのような大きめのプランターがおすすめです。しかしこれより大きいプランターは費用も体力かかります。筆者の体力では45cmポットが鉢栽培の限界で引きずりながら鉢を移動させています。植木鉢を苗木ごと持ち上げて運ぶなら33cmか39cmくらいの角鉢が最適です。

摘果

果実のサイズにもよりますが、1枝に3果~5果が目安で、桝井ドーフィンやロングトゥート(バナーネ)のように果実の大きな品種以外は摘果に気を遣う必要はありません。ドーフィン(大サイズ)の場合1葉に1果とも言われます。ロードスやブリジャソットグリースなど40g以下の中小果の品種では摘果する必要はありませんが、枝についている果実が少なくなるほど若干サイズが大きくなります。数を取るか、サイズを取るかは好き好きといえましょう。

鉢植えイチジクの摘果

袋かけのやり方

イチジクの袋かけは収穫間際まで不要です。専用の果実袋はBIKOOイチジク専用袋があるようです。高温期に透明袋をかけると、果実が干からびてしまいますので要注意です。BIKOOイチジク専用袋は降雨があると袋の中で果実が腐敗したり緑カビが発生し、夜露、朝露も好ましくない印象でしたので、収穫まであと1~2日というところの晴天続きか雨よけ栽培での使用をおすすめします。特に鉢植えのイチジクに袋かけをするのであれば、真夏の直射日光を避け、9月以降がおすすめです。イチジクは高温多湿と雨に弱いので雨除け栽培がおすすめです。涼しくなれば、水を通さないジップロックのほうが雨防止に役に立つのではないかと思います。100円ショップに排水溝用の不織布が売られていますので、それを使うと便利です。

イチジクの袋掛け 不織布
イチジクの袋掛け 自作の不織布の果実袋

イチジクの袋かけのタイミングは、イチジクが真横を向いたあたり(収穫1~2日前)か、果実が裂る直前(収穫1~2日前)がよいのではないかと思います。このような布状の半透明の小さな袋が中の状態も確認しやすくておすすめです。

BIKOO - S いちじく 用 (165×225) 切込付 (農産物保護用袋) 100枚入

鉢植えイチジクのBIKOO袋掛け
真夏に袋かけをして失敗したイチジク。

オイル処理のやり方

イチジクの目に食用のオイルを1滴垂らすと熟期を早めることができます。実が膨らみ、緑色が薄くなり目が膨らみはじめたころ合いが適期です。

エスレル処理のやり方

イチジクの果実にエスレル処理をすると通常よりも数日早く肥大・収穫することが可能です。1枝につき1果~3果までの実に規定通りに水で希釈したエスレルをスプレーで噴霧します。エスレル処理に適した時期は、緑色が薄くなり目が膨らみはじめた頃です。あまり早くに処理を行うと、見た目だけ大きくなり中身の成熟が伴わない不味い実になってしまいます。

イチジクの収穫時期について

イチジクは果実が垂れ下がるか少し裂果した頃合いが収穫のタイミングです。黄緑のイチジクの場合は色が黄色くなることもあります。あたりに甘い香りがしたり、果皮に糖分が出てきたりします。熟すと果皮や果実の底面に亀裂が入ることもあります。できれば樹上で完熟まで待っておきたいところですが、日本の気候では害虫の邪魔が入ったり、夜が冷えると夜間に果実が結露してカビが繁殖しますので水分を抜いて糖度を高めるにはオーブンや食品乾燥機などで乾かしたほうがよいでしょう。

イチジクを1週間早く熟させるには、果実の裏側のくぼみが赤くなってきたらサラダ油を1滴垂らします。イチジクが裂果しましたら糖度が上がっていなくても雨が降ったり虫が来ないうちに収穫します。イチジクの収穫期は品種によって異なりますがたいていは果実が下垂してから収穫します。鉢植えの際は水のやりすぎによる早期裂果に注意し、果実に水がかからないようにします。イチジクの秋果は結実から収穫まで75日~95日程度で気温と日照に風味が影響され温度や日照時間が不足すると甘味が損なわれます(参考:http://farc.pref.fukuoka.jp/farc/seika/h12/h12-8-18.pdf)。よって初結果した日付を枝に書いたり札を下げておけば収穫時期のおよその目安がわかります。夏果は前年の冬の時点で枝に小さな実のようなものが付いていて、それが春に大きくなり7月あたりに収穫します。イチジクの秋果は5月から7月あたりに果実が生じはじめ、8月あたりから熟しはじめます。秋果の成熟は、さらに二季に分かれて熟すこともあります。

イチジクホワイトゼノア
イチジクホワイトゼノアは品質が良くて焼き菓子などに適しています

イチジクは品種によって甘さが大きく異なります。私の味覚では、糖度10台後半は甘味よりも香りや味を強く感じ、糖度20度台前半くらいが甘味と風味が良い具合に両立し、糖度30度近くになると甘くてジャムを食べてるみたいな感じに思えました。

病害虫について

イチジクの害虫アオバハゴロロモの幼虫

イチジクの害虫、カミキリムシの幼虫や病気により、大木でもイチジクは突然枯れますので注意が必要です。果実の中にも昆虫が入っている可能性があるので中をよく見てから食べましょう。上記の写真はアオバハゴロモという幹から樹液を吸汁する害虫の幼虫です。この幼虫は白い分泌物を出して身を隠すのが特徴で、成虫同様に俊敏で捕まえるのが困難です。アオバハゴロモは成虫になっても幹から吸汁を続け、果実への被害は無くても新梢が傷んで、もしかすると糖度にも影響が出ているかもしれません。

イチジクの木がカミキリムシの幼虫に食われて枯れた様子

枯死した筆者のイチジク。この跡地にイチジクを植えてはいけません。このような大木でもカミキリムシの幼虫などの害によって突然枯れることがあります。苗木のバックアップは欠かせません。

アリや地面からのぼってくる害虫対策

あと一週間くらいで収穫というところになるとアリが木登りをはじめて厄介です。アリは果実の裂果した部分や尻の隙間から果実を食い荒らしてすぐに腐敗させてしまいます。しかしアリは飛んでくるのではなく地面から登ってきますので私は幹に粘着シートを巻き付けておくことでアリ対策をしてみました。収穫間際に粘着シートを幹に巻き付けておく方法は地面から這い上がる害虫にも効き目があるのではないかと予想しています。アリが行列を組んだところは水をかけて洗い匂いを消しておきましょう。あるいは代替となる果物を置いておくなどしてアリがイチジクのことを忘れるようにします。

イチジクのアリ対策にトルシー
イチジクのアリ対策にトルシー使用

保存方法

イチジクは冷凍保存または乾燥させてから冷蔵庫で保存します。ドライイチジクに適した小果で高糖度の品種は乾かすことでさらに糖分が凝縮されます。長期保存はジャムにして殺菌した密閉容器に小分けにして保存します。糖度を測ってみることも楽しみのひとつとなります。

イチジク

レシピいろいろ

イチジクはいろんな料理に使えます。乾燥させた果実はパンに入れるとおいしいです。生の果肉は煮詰めてジャムにするとコクが出ます。チャツネとしてカレーに入れたり。私はオーブンでじっくり焼いて水分を飛ばして甘く作ってみました。どちらかというと水分の少ないイチジクが好みです。

イチジクをオーブンで焼いてみました
イチジクをオーブンで焼いてみましたら糖度45度程度になりました

おすすめの本の案内

余裕があれば「NHK趣味の園芸イチジク」が手元にあると、私などが説明したページよりも、心強いと思います。「イチジクの作業便利帳」は農家向けに書かれた本ですが、平易な言葉で書かれてますので誰でも理解できると思いますし、趣味の園芸より詳しいはずです。もしも、利益など無視してイチジクを道の駅やご近所に売りに出すなり人にプレゼントする場合は、販売方法も書かれているご著書がおすすめです。


イチジクの作業便利帳 2015年出版の本です。

イチジク 栽培・利用加工 (育てて楽しむ) 2017年出版の最新の本です。

特に一文字整枝についてより詳しくお知りになりたい方にはご本が断然おすすめです!

おすすめの苗木のご案内

イチジクの苗木を少しだけ紹介したいと思います。定番品種、桝井ドーフィンについてですが、確かに市販の桝井ドーフィンの果実はおいしくありません。ですが、自宅の畑で栽培した桝井ドーフィンの完熟は、従来のイメージを覆すのに十分な風味があります。少々誤解があるかもしれませんが、以下に紹介している蓬莱柿、これは海外産の品種です。日本種と書かれていますが・・・ドーフィンも蓬莱柿も海外産の輸入品種で姫蓬莱は国産品種です。桝井ドーフィン、蓬莱柿、いずれも日本の定番品種です。

おもしろイチジクコラム

ここでは私のナマの栽培経験から生まれた、ちょっと面白い無花果のエッセイなどを綴っています。

筆者が四苦八苦して育てているイチジクの栽培記録です。

イチジクオタクになる方法

イチジクオタクになる方法は簡単です。まずはイチジクにも多くの品種があることを偶然知り、好奇心が湧いてインターネットでイチジクの情報をかきあつめます。そしてまずはイチジク仙人さんの「イチジクと砂丘を渡る風」にたどり着き、熟読するも更新が停滞していることにがっかりします。仙人さんのブログから、どうやら日本に輸入されているイチジクのほとんどが、海外産の欧州やアメリカの品種であることを学びセレストとの交配種の長所の魅力をおおいに学びます。その仙人さんの情報をもとに、さらなる情報を求め、いろんなキーワードでイチジクを検索します。「イチジク おいしい品種」「イチジク 高糖度」「イチジク 糖度 比較」「fig brix」「fig tasting」などなど。ほとんどの品種が海外にあることを知ったイチジクオタクは、そのうち「fig4fun」というアメリカのコミュニティーを発見します。もしかしたらその前に、あなたは私の第二のウェブサイトを発見しているかもしれません。そしてAからZまで索引のある世界に類をみない完璧なイチジクオタクのコミュニティにわくわくしながらも、とりあえず、ABCD・・・と順番にすべての品種に目を通し、驚きとともに本当のイチジクオタクが求めているものが桝井ドーフィンのようなものではないことを悟ります。語学力のある人は、さらにrichやbestといった風味の表現にアンテナを張り巡らせます。イチジクオタクの特徴は、無料で得た豊富な品種の知識だけでなく、降雨で腐敗せず粒が大きく糖度の高い風味良好な理想のイチジクが日本国内にないことにがっかりし、これはと思うイチジク苗のベターを購入し育成しつつもほかの品種が気になってしまいます。ブルーベリーオタクと異なりイチジクオタクには特別な叩き上げのスキルはありません。なぜならイチジクの栽培に高度なスキルや専門知識は必要ないからです。つまるところ、イチジクオタクは無能であることと同じでほとんどは実力をともなわず卓上で空想しているだけなのです。(続く)

あとがき

どうでしたか?いちじくの育て方の解説は。私よりも栽培方法に詳しい方はもっともっと多くいらっしゃいますので、個人の趣味で栽培方法を紹介するのはかなり恥ずかしいですがイチジクを育てる楽しさは伝わったかと思います。より詳細な育て方はご本や専門家のホームページがおすすめです。読み返してみても肝心の樹形の説明をしておらず実経験でも水不足とコガネムシ以外に深刻なトラブルはないので少々希薄な内容となってしまいました。筆者にしか書けないことを中心に育て方を述べてまいりましたので少しでも参考になりましたら幸いです。

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更新履歴
  • 2018年10月31日: オイリングとエスレル処理、栽培適地について述べました。
  • 2018年4月13日: 遮光ネットについての実践をもとに記述しました。このことをイチジクの栽培法として言及したのはネット上で筆者が初めてです。
  • 2018年4月13日: イチジクの栽培記録のページにリンクしました。
  • 2017年2月26日: 冬季の脳卒中のリスクを考慮した栽培カレンダーに改定しました。
  • 2016年12月18日: プライバシーポリシーと著作権を明記しました。
  • 2016年12月14日: ページURLを移動し、SSL完全対応といたしました。
 

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